再結成ディープ・パープル以降のリッチー・ブラックモアのプレイに落胆し、来日も期待せずにロック離れしていた筆者であったが、90年代に入ってからのリッチー・ブラックモアのプレイには復活を感じていた。
ブラックモアズ・ナイトに関しては、世間では否定的な意見も多かったが、筆者にとってはロックをやるリッチー・ブラックモアもルネサンス音楽をやるリッチー・ブラックモアもどちらも好きなので、また新たな世界が広がったような気がしてうれしい気持ちもあった。
当時はブラックモアズ・ナイトというプロジェクト自体が単発で終わると思っていたので、ライブをやる可能性は低いだろうと考えていた。
しかし、予想を裏切り、ツアーが実現し、しかもそのスタートがこの日本に決まった。 まさかの来日公演であった。
スケジュールが発表され、11月8日の東京公演のチケットを予約した。
ロックの形体ではないアコースティック主体のライブ・サウンドをどうやって作ってくるかという興味があった。
ストラトキャスターで大きな音を出すのとは、全くの畑違いのサウンドである。
そして、気になるセット・リストはどうなるのか?
アコースティックのみ?
ディープ・パープルやレインボーの曲はやるのか?
ワールド・プレミアということでまったく情報がないままにライブに臨んだ。
リッチー・ブラックモアの夢が実現した来日公演
開演前のステージを見るとなにやら絨毯が敷いてあり、ドラムセットもアンプ群もロックのそれとは違って小さめである。
観葉植物のようなものもセットされていて明らかに雰囲気が違う。
おそらく今までのリッチー・ブラックモアのステージとはまったく違うものになるんだろうな、なんてことを思っているとステージが暗転。
キャンディス・ナイトのアカペラがイントロとして流れ、オープニングは「Shadow of the moon」だった。
これは予想通りだった。
というか、これしか予想できなかった。
注目のリッチー・ブラックモアの使用ギターはテレキャスター・タイプのシェイプにアコースティック・ギター用の弦を張ったものである。
他にサイド・ギターを加えた6人編成であったが、キャンディス・ナイトがステージ慣れしてないせいであろう、ぎこちなさが目立って初々しかった。
リッチー・ブラックモアにとってもはじめてのアコースティック・ライブとあって手探りの部分も多かったであろう、いつもより慎重にステージを進めているようにも見えた。
しかし、アコースティック・ギターに持ち替えたとはいえ、ソロは当然のようにインプロヴァイズであった。
このへんはポリシーなのであろうが、1曲とてアルバムとは同じソロがなかったのはリッチー・ブラックモアの面目躍如といったところだろう。
さすがである。
ライブは、その後もアルバム『Shadow of the moon』からの曲を中心に進んでいき、迎えた中盤、ついにレインボーの曲が飛び出した。
「Temple of the king」と「Sixteenth century greeensleeves 」である。
2曲ともアコースティック・ギターで演奏されたのであるが、自然にこれまでの流れに乗っていた。
それにしても「Temple of the king」はライブで披露された記憶はないし、「Sixteenth century greeensleeves 」もロニー時代が最後だから20年弱の時を経ての演奏である。
その後はまたアルバム『Shadow of the moon』からの曲が続いたが、アコースティックのセットの中では、やはりレインボーのファースト・アルバムの2曲が一番の盛り上がりを見せた。
レインボーからはもう1曲「Ariel」も演奏されたが、これはレインボーというよりブラックモアズ・ナイトの曲という感じだった。
ついにストラトキャスターを持ったリッチー・ブラックモア
そうこうしているうちに本編が終了し、場内が暗転した。
アンコールを求める歓声が響いていたが、アルバムの曲もほとんど演奏されたし、ライブはアコースティックのみで終わるのかどうなるのかと思っていたその時、あのノイズが聞こえてきた。
そう、ストラトキャスターのあのノイズである。
軽くワンフレーズ弾いた後、「Still I❜m sad」へなだれ込む。
会場は待ってましたとばかりに大騒ぎである。
ベートーヴェン、ベース&ドラム・ソロを挟んで「白鳥の湖」へ。
このあたり、この日一番の盛り上がりで、やはりというべきかみんなストラトキャスターを持つリッチー・ブラックモアを待っていたようだ。
2回目のアンコールでは「Street of dreams」が演奏された。
個人的にはレインボーで最も好きな曲のひとつなだけに短縮バージョンとはいえ、これを聞けて感無量であった。
3回目のアンコールでは再びアコースティックに持ち替えて「Wish you were here」で幕を閉じた。
ブラックモアズ・ナイト来日公演1997~11月8日のセットリスト
Shadow of the moon
Be mine tonight
Play minstrel play
St.theresa
Minsirel hall
Under the violet moon
Temple of the king
Sixteenth century greeensleeves
Memmingen
Renaissance fair
Mond tanz
No second chance
Ariel
The clock ticks on
-1st encore-
Still I❜m sad~Difficult to cure~bass&keyboard solo~Writing on the wall
-2nd encore-
Street of dreams
-3rd encore-
Wish you were here
ブラックモアズ・ナイト来日公演1997~まとめ
12年ぶりのリッチー・ブラックモアであったが、今回は、とても満足できたし、楽しめるライブだった。
個人的に85年の再結成ディープ・パープルの来日ライブがいまひとつだっただけに、こうして新しいプロジェクトできちんとギターを弾くリッチー・ブラックモアを見れたのが何より嬉しかった。
思えばキャンディス・ナイトに出会ったのが確か1989年のこと。
復調してきたのが90年代に入ってからというのを考えるとキャンディス・ナイトの存在っていうのは、こちらが考えているよりはるかに大きかったのではないか?
邪推にすぎないかもしれないが、勝手にそう思っている。
これでまたしばらくはリッチー・ブラックモアの活動が期待できるなと思ったのだが、次の来日までは今までにない時間を要することになる。
コメント