アルカトラスでのデビュー以来、少年にとってイングヴェイ・マルムスティーンは目を離せない存在ではあったが、速弾きばかりがクローズアップされてギター以外の部分が今一歩の感があった。
そんなイングヴェイ・マルムスティーンの初期3部作の完結作にあたるアルバがこの「トリロジー」である。
今回は、初期の名盤の誉れ高いイングヴェイ・マルムスティーン「トリロジー」の感想を綴ってみたいと思う。
イングヴェイ・マルムスティーン「トリロジー」
前作の「マーチング・アウト(Marching Out)」までは、スウェーデンにいた頃からストックしていた曲を使用していたが、この「トリロジー」では新たに書き下ろした新曲が収録されている。
バンドのメンバーはキーボードとドラムスのヨハンソン兄弟は従来通りだが、ヴォーカルがジェフ・スコット・ソートからマーク・ボールズにチェンジし、ベースはマルセル・ヤコブが脱退しイングヴェイ自らがプレイしている。
そんなこともあってか、「トリロジー」は前作のライジング・フォース名義ではなく、ソロ名義となっている。
イングヴェイ・マルムスティーン「トリロジー」の収録曲とメンバーは、以下の通り。
「トリロジー」 イングヴェイ・マルムスティーン
収録曲
1.ユー・ドント・リメンバー(You Don’t Remember, I’ll Never Forget)
2.ライアー(Liar)
3.クイーン・イン・ラヴ(Queen In Love)
4.クライング(Crying)
5.フュリー(Fury)
6.ファイヤー(Fire)
7.マジック・ミラー(Magic Mirror)
8.ダーク・エイジズ(Dark Ages)
9.トリロジー・スーツ Op:5(Trilogy Suite Op:5)
メンバー
ギター&ベース:イングヴェイ・マルムスティーン
ヴォーカル:マーク・ボールズ
キーボード:ヤンス・ヨハンソン
ドラムス:アンダース・ヨハンソン
1986年の発表。
イングヴェイ・マルムスティーン「トリロジー」の感想
ひと通り聞いて今回は、だいぶ曲を練ってきてるなと思った。
上述したように、前作まではスウェーデンにいた頃に書いた曲のストックでアルバムを作っていたが、この「トリロジー」は、ほとんどの曲を新しく書き下ろしたとの事。
ギター・プレイの凄さに加えて、曲に緩急が加わり、よりキャッチーになった。
「You Don’t Remember, I’ll Never Forget」「Queen In Love」「Fire」あたりにその傾向がよく表れている。
ヴォーカルがマーク・ボールズに代わっているのもプラス要因で、ハイトーンのメロディーを軽々と歌いこなしている。
この後もかなりの数のシンガーと組んだイングヴェイだが、個人的にはマーク・ボールズが一番フィットしているように思う。
ハイトーンのヴィブラートという点で1歩も2歩も他のシンガーより抜きん出ている。
インストゥルメンタルは「Crying」と「Trilogy Suite Op:5」の2曲だが、タイプの異なる曲で、特に「Trilogy Suite Op:5」は、その後、ライブの定番となる大作だ。
「トリロジー」は、初期3部作の最後を飾るにふさわしいイングヴェイらしさが凝縮されたアルバムだ。
初期の名盤+イングヴェイのギター・プレイはキャリアの頂点に
「トリロジー」は初期の名盤であるとともに、もうひとつ触れておきたいのがイングヴェイのギター・プレイである。
イングヴェイは、この後、自動車事故に遭い、1週間意識不明の昏睡状態に陥る。
その影響はやはり次作以降表れている。
サウンドも変わり、荒削りな感は否めない。
必死のリハビリで徐々に回復はするものの1音1音の粒立ちの良さ、正確性、そしてサウンドも事故直前のこの「トリロジー」の頃がピークだったように思う。
あくまでも体の機能の問題なので、あの事故が残念でならない。
イングヴェイのギター・プレイは、この「トリロジー」でキャリアの頂点を極めたといっていいだろう。
イングヴェイ・マルムスティーン「トリロジー」~まとめ
今回は、初期の名盤の誉れ高いイングヴェイ・マルムスティーン「トリロジー」の感想を綴ってみた。
ギタリストにとっては、初期の傑作は「ライジング・フォース(Rising Force)」になると思うが、一般リスナーにとっては、この「トリロジー」がキャッチーな歌ものが多くておすすめである。
聞かせるという点においてもこの「トリロジー」でイングヴェイがレベルアップしているのは明らかである。
単なるギター・アルバムとしてだけではなく、イングヴェイがトータル・ミュージシャンとして音楽を隅々まで吟味して作った初めてのアルバムなのではないか?
この方針は今もなお変わっていないように思われる。
ミュージシャンとして一皮むけたイングヴェイ、3部作の完結とともにまた新たなレベルに達した姿が表現されたアルバムとして「トリロジー」をぜひ聞いていただきたい。
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