ディープ・パープル再結成後、ヴォーカルをイアン・ギランからジョー・リン・ターナーにチェンジして発表されたアルバムが「スレイヴス・アンド・マスターズ」だ。
ジョー・リン・ターナー加入によって元レインボーのメンバーが3人になり、サウンドもよりレインボーに近づいたため物議をかもした。
「スレイヴス・アンド・マスターズ」は、それまでのディープ・パープルのアルバムと比べてどうだったのだろうか?
今回は、ディープ・パープルのアルバムが虹色に染まった「スレイヴス・アンド・マスターズ」の感想を綴ってみたいと思う。
ディープ・パープル「スレイヴス・アンド・マスターズ」
卒業を控え、学業が忙しくなってしまった少年は、残念ながらクラシック・ギターのレッスンを辞めざるを得なくなってしまった。
そして無事に卒業して就職を果たすのだが、80年代も終わろうかというこの頃、ハード・ロックのブームも陰りを見せ始め、暗黒の90年代に入ろうとしていた。
そして、突入した90年代のディープ・パープル初のアルバムがこの「スレイヴス・アンド・マスターズ」だった。
「スレイヴス・アンド・マスターズ」 ディープ・パープル
収録曲
1. キング・オブ・ドリームス(King Of Dreams)
2. ザ・カット・ランズ・ディープ(The Cut Runs Deep)
3. ファイア・イン・ザ・ベースメント(Fire In The Basement)
4. トゥルース・ハーツ(Truth Hurts)
5. ブレックファースト・イン・ベット(Breakfast In Bed)
6. ラヴ・コンクァーズ・オール(Love Conquers All)
7. フォーチュンテラー(Fortuneteller)
8. トゥー・マッチ・イズ・ノット・イナフ(Too Much Is Not Enough)
9. ウィキッド・ウェイズ(Wicked Ways)
メンバー
ギター:リッチー・ブラックモア
ヴォーカル:ジョー・リン・ターナー
ベース:ロジャー・グローヴァー
キーボード:ジョン・ロード
ドラムス:イアン・ペイス
1990年の発表。
ディープ・パープル「スレイヴス・アンド・マスターズ」の感想
ディープ・パープル「スレイヴス・アンド・マスターズ」から出てきたサウンドは予想通り、ディープ・パープル+レインボーであった。
レインボーのラスト・アルバム「ストリート・オブ・ドリームス(BENT OUT OF SHAPE)」の後に出ていてもまったく違和感のない内容である。
そりゃそうだろう、元レインボーが3人もいるんだから。
振り返ると再結成ディープ・パープルのそれまでの「パーフェクト・ストレンジャーズ」と「ハウス・オブ・ブルー・ライト」にしてもジョー・リン・ターナーが歌っても違和感がないと思う。
つまり、再結成ディープ・パープルの音楽性は後期レインボーの延長線上にあったといえる。
70年代の全盛期のサウンドはまるで意識していなかったのではないかとさえ思える。
曲作りの中心人物であるリッチー・ブラックモアの音楽的嗜好がすべてを決めていたともいえる。
賛否両論あるとはいえ、レインボーをディープ・パープルのメンバーで演奏をしたともいえるこの「スレイヴス・アンド・マスターズ」はやはりいいアルバムだと思う。
個人的には再結成ディープ・パープルのアルバムの中では一番好きだ。
曲も粒ぞろいで、ジョー・リン・ターナーもまだ声が出ている。
ディープ・パープルにジョー・リン・ターナー加入はあり?なし?
この頃、筆者にとっては何よりもずっと好きだったリッチー・ブラックモアのプレイが精彩のないものに感じられていた。
致命的だったともいえる。
社会人一年生としての多忙な日々も加わって徐々にロック離れが進み、ギターを弾く時間もロックを聞く時間もめっきり減ってしまった時期だった。
こうして大人になるにつれ、ロックを聞かなくなっていくのかなと思っていた頃、ディープ・パープルにジョー・リン・ターナーが加入したという情報が入ってきた。
もともと再結成ディープ・パープルでのイアン・ギランのヴォーカルには不満だったので、シンガー交代には賛成であったが、ジョー・リン・ターナーという選択はどうだったか?
よくいわれてきたことではある。
代わりがいなかったからというのが理由として言われているが、なんとか他のシンガーを見つけられなかったのかという気が今でもする。
ジョー・リン・ターナーを入れれば、もろレインボーになってしまう。
そんなことを危惧しながらリリースされたのが、この「スレイヴス・アンド・マスターズ」だった。
メンバーのインタビューを見ると、ジョー・リン・ターナー以外のメンバーにはかなりの温度差が感じられる。
結局はいいシンガーがいなかったので仕方がなかったということになるが、個人的にはイアン・ギランではどうしようもなかった以上ありだったのかなと思う。
ディープ・パープル「スレイヴス・アンド・マスターズ」~まとめ
今回は、ディープ・パープルのアルバムが虹色に染まった「スレイヴス・アンド・マスターズ」の感想を綴ってきた。
音楽から遠ざかっていた筆者にとって、この「スレイヴス・アンド・マスターズ」は意外と楽しめるアルバムだった。
この頃精彩を欠いていたリッチー・ブラックモアのプレイもいつになくいい。
このラインナップをディープ・パープルと名乗ることには違和感を覚えるが、ただこだわりなく聞けばいいのである。
もう70年代のディープ・パープルを聞けることはないのだから、幻を追い続けても仕方がない。
当の本人リッチー・ブラックモアの目指す音楽性が70年代とは全く違うのだから。
このラインナップでまた次のアルバムを期待していたのだが、まさかイアン・ギランを呼び戻すとは…。
ジョー・リン・ターナーの加入より驚いた。
結成35周年記念とはいえ、よくあのリッチー・ブラックモアがOKしたものだ。
結局はジョー・リン・ターナー参加のディープ・パープルはこの1枚のみで終わってしまったが、ディープ・パープルとレインボーが合体したアルバムとして裏の名盤といったら言い過ぎか?
コメント