80年代の少年にとってゲイリー・ムーアというミュージシャン・ギタリストは、リッチー・ブラックモア、マイケル・シェンカーに並ぶビッグ3ともいうべき存在であった。
そんなゲイリー・ムーアの傑作というと以前「Corridors of Power(大いなる野望)」を取り上げたが、もうひとつ少年にとって忘れることのできない名盤がこの「ワイルド・フロンティア」だ。
ゲイリー・ムーア生涯の名演「ザ・ローナー」を収録しているという点でも聞き逃すことができない名盤といえる。
今回は、ゲイリー・ムーアのアイリッシュの名盤「ワイルド・フロンティア」の感想を綴ってみたたいと思う。
ゲイリー・ムーア「ワイルド・フロンティア」
「ワイルド・フロンティア」はゲイリー・ムーアの8作目のスタジオ・アルバムで、シン・リジィ時代のアルバム「ブラック・ローズ」以来のアイリッシュをベースとしたアルバムだ。
1986年1月に亡くなったシン・リジィ時代の盟友フィル・ライノットに捧げられた。
ゲイリー・ムーア「ワイルド・フロンティア」の収録曲とメンバーは、以下の通り。
「ワイルド・フロンティア」 ゲイリー・ムーア
収録曲
1. 望郷の果て(Over the Hills and Far Away)
2. ワイルド・フロンティア(Wild Frontier)
3. テイク・ア・リトル・タイム(Take a Little Time)
4. ザ・ローナー(The Loner)
5. フライデイ・オン・マイ・マインド(Friday on My Mind)
6. 暗黒の侵入者(Strangers in the Darkness)
7. 雷鳴(Thunder Rising)
8. ジョニー・ボーイ(Johnny Boy)
メンバー
ギター&ヴォーカル:ゲイリー・・ムーア
キーボード:ニール・カーター
ベース:ボブ・デイズリー
1987年の発表。
ゲイリー・ムーアの「ワイルド・フロンティア」の感想
このアルバムは随分と聞きこんだ覚えがある。
ハード・ロックにアイリッシュのテイストを乗せたその音楽性が少年の好みにすっかりハマったからであろう、アイリッシュ音楽の哀愁を帯びたメロディーが心にしみた。
しかし、作りは改めて聞くと実にシンプルだ。
ギターも技術的な方に走ることもなく目一杯メロディーを歌っている。
ギター・アルバムではなく音楽として純粋にアイリッシュ・ハード・ロック(勝手に命名?)を追及した姿が感動的だ。
アイリッシュ・ハード・ロックといえばシン・リジー、そしてそのバンドのリーダーであるフィル・ライノットを思い出すが彼にもピッタリだなと思わせるような曲がいくつか収録されている。
彼に捧げたアルバムなのだからそれも納得だ。
それが名盤になった。
ゲイリー・ムーア生涯の名演「ザ・ローナー」
もうひとつこのアルバムには、忘れてはならない名演が収められている。
「ザ・ローナー(The Loner)」だ。
マックス・ミドルトン作のこのインストゥルメンタル・バラードはまさにゲイリー・ムーアが凝縮された逸品だ。
速弾きなどとんがった技術はないが、ビブラート、チョーキング、サウンドなどゲイリー・ムーアの真骨頂がこれでもかといわんばかりに詰め込まれている。
ゲイリー・ムーアの表現力が最高のレベルまで昇華した名演といっていいだろう。
アレンジ、プレイ、サウンドなど、もういじる必要のない完成品に仕上がっており、名盤に華を添えている。
ゲイリー・ムーア「ワイルド・フロンティア」の感想~まとめ
今回は、ゲイリー・ムーア生涯の名演「ザ・ローナー」収録のアイリッシュの名盤「ワイルド・フロンティア」の感想を綴ってきた。
ゲイリー・ムーアはこの後、もう1枚ハード・ロックのアルバムを発表して、その後はブルース路線にシフトしていく。
晩年、引退していたニール・カーターを呼び戻し再びアイリッシュ・ハード・ロックに戻ろうとした矢先、帰らぬ人となってしまった。
個人的にキャリアを通してイチバン好きだったのがアイリッシュ・ハード・ロック時代だけに残念でならない。
ブルースにあこがれてはいたもののアイルランド人である自らのルーツである音楽を奏でた時には、その魂と血が音楽と同化したように思えてくる。
長いキャリアの中でアイリッシュ・ハード・ロックを演った時期はそう長くはなかったが、ゲイリー・ムーアならではの泣きのフレーズとアイリッシュ音楽が見事に融合した名盤としてこの「ワイルド・フロンティア」は今なお燦然と輝いている。
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