近年、コンサートでアンコールなしというケースが増えていることに気づいた方もいらっしゃるのではないでしょうか？
特に日本では、アンコールは「あるのが当たり前」とされてきた文化が根強く、バンドやアーティストによるライブでも、当然のようにアンコールが期待されてきました。しかし今、その“ありき”の常識が少しずつ変わり始めています。
実は、アンコールをあえて行わない背景には、アーティスト側の演出意図や文化的な価値観の変化、そして観客との新しい関係性があります。
今回は、なぜコンサートでアンコールなしが当たり前になりつつあるのか、日本と海外との違いや、クラシックコンサートとの比較なども交えて、その理由を深掘りしていきます。
この記事でわかること
- なぜ最近「コンサート アンコール なし」が増えているのか、その背景と理由
- 日本と海外のライブ文化におけるアンコールの違い
- セトリに込められた演出と、アーティストの意図
- クラシックコンサートとバンドライブにおけるアンコールの位置づけ
コンサートでアンコールなしが増えている理由とは
「アンコールがなかった！」という声を耳にする機会が増えていませんか？
一昔前なら“当たり前”のように行われていたアンコールですが、近年はそれがなくても違和感を持たない公演が増えています。
ここでは、なぜコンサートでアンコールが行われなくなってきているのか、その理由や背景を詳しく見ていきます。
アンコールがないのはなぜ？
近年、「アンコールがなかった！」という感想をSNSで目にすることが増えました。しかし実際には、それがネガティブな意味ではなく、アーティスト側の明確な意図である場合が多くなっています。
コンサートにおけるアンコールは、以前であれば「当然あるもの」という認識でした。しかしその常識が変わりつつあるのは、演出の一環としてあらかじめアンコールを含めたセットリストを構成しているアーティストが増えてきたからです。つまり、”最初から最後までが一つの作品”という考え方が広まりつつあるのです。
また、終演後のアンコールが「予定された演出」になってしまうと、観客の「もう一度出てきて！」という本来の意味とはかけ離れてしまいます。だからこそ、本編のクオリティや流れを大切にするため、あえてアンコールを排除するケースが増えているのです。
このように、アンコールがない背景には、観客との信頼関係を前提に「きちんと構成された終わり」を届けたいという、アーティスト側の意識の変化があると言えるでしょう。
ライブの流れを重視するアーティストの意図
現代のアーティストたちは、ライブを単なる“曲の披露の場”ではなく、”ひとつの物語”として捉える傾向が強まっています。つまり、ステージ全体の流れや感情の起伏、照明や映像との一体感など、トータルで体験させる芸術作品として構成しているのです。
その中でアンコールは、必ずしも必要なものではありません。むしろ、感動的なラストで本編が終わった後に、再び登場して別の曲を演奏することが、その感情の余韻を壊してしまう可能性もあります。
実際、国内外の著名アーティストの中には「最初からアンコールはしない」と公言している人も増えています。彼らにとっては、ライブを完璧に設計された一連の演出として見せることこそが重要であり、観客に“終わりの美学”を体験してほしいという思いがあるのです。
アンコールがないという決断は、観客への手抜きではなく、むしろ“本気”の表れと解釈することができます。その意図を知ることで、私たちは新たなライブの楽しみ方を知ることができるでしょう。
セトリ（セットリスト）に仕込まれた演出
近年のライブでは、セットリスト（セトリ）自体がひとつの演出装置として巧妙に設計されていることが増えています。かつては「アンコール＝おまけ」とされることが多かったものの、今ではアンコール部分まで含めて最初から構成に組み込まれていることも珍しくありません。
たとえば、感情の盛り上がりを意図的にクライマックスへ持っていくようにセトリを組み、最後の一曲で“完結”させる構成にすることで、観客に強い印象を残すことができます。その終わり方に余計な“呼び戻し”が入ることで、流れが崩れてしまうことを避けたいという考えが反映されています。
また、照明・映像・演出効果などが曲ごとに緻密にリンクしており、最終曲でピークを迎えるように全体が設計されている場合、「アンコール」という枠外の演奏はむしろ蛇足になってしまうことも。
このように、セトリに込められた意味を理解すればするほど、アンコールなしの公演も「完成度の高いパフォーマンス」として高く評価できるようになります。
「アンコールありき」が見直される背景
「アンコールがあるのが当たり前」という考え方は、長らく日本の音楽文化に根付いてきました。しかし現在、「アンコールありき」という前提が少しずつ揺らぎはじめています。背景にあるのは、音楽業界全体の意識の変化です。
まず、アーティスト側の体力的・精神的な負担が無視できなくなっています。長時間のパフォーマンスを終えたあと、さらに何曲もアンコールで求められるのは想像以上に過酷です。そのうえ、アンコールが当然とされる風潮の中では、断ることへの心理的ハードルも高くなりがちです。
また、演出やセットリストが綿密に計算されているライブでは、「アンコール＝本番とは別枠」ではなく、「ライブ全体の一部」として計画されています。つまり、観客にとっては“本編のラスト”が最高の瞬間であり、そのまま終わることが最も美しい場合もあるのです。
こうした動きを受けて、一部のファンや音楽メディアの間でも「アンコールがないのは手抜きではない」という認識が広まりつつあります。アンコールの“義務化”が薄れ、より自由で多様なライブの形が求められている今、新しい価値観が生まれているのです。
何回も呼ぶ文化への疑問と変化
日本のコンサート文化では、アンコールを何度も求める光景が珍しくありません。「もう1回！」「ダブルアンコール！」という観客の声援は、一体感や熱気を生む要素として親しまれてきました。しかし、近年ではこの“呼び出し文化”に疑問を持つ声も増えてきています。
もともとアンコールとは、演奏に感動した観客が自然と起こす「もう一度聴きたい」という気持ちの表現でした。しかし、現在の日本では“複数回のアンコール”が暗黙の了解のようになっており、アーティストにとってはプレッシャーになることもあります。
一方、海外ではアンコールはあっても1回きりが一般的で、それ以上を期待することは稀です。つまり、日本独特の“終わらせてもらえない”空気は、アーティストの自由な表現を妨げる可能性もあるのです。
最近では、アンコールを一切行わないことを事前に告知する公演も増えてきており、「何回も呼ぶのが当たり前」という文化そのものが見直され始めています。観客側も新しいライブの楽しみ方を受け入れることが求められているのかもしれません。
コンサートでアンコールなしが当たり前じゃないのは日本だけ？
「アンコールがないなんて冷たい…」と感じた経験はありませんか？
それはもしかすると、日本特有のライブ文化に慣れているからかもしれません。ここでは、アンコールに対する価値観が海外ではどう異なるのか、日本との文化的な違いやバンドの演出スタイルの違いを通して探っていきます。
アンコール文化は日本だけのもの？
「日本ではアンコールが当たり前だけど、海外でもそうなの？」という疑問を持つ人は多いでしょう。実は、アンコール文化のあり方には国によって大きな違いがあります。
たとえばヨーロッパのクラシックコンサートでは、アンコールがあるときもありますが、それは極めて特別な場合です。観客がスタンディングオベーションを起こしたり、鳴り止まない拍手が続いたりしたときに、演者が応える形で追加の曲を披露する…それが本来のアンコールです。
ロックやポップスのライブにおいても、欧米では“あらかじめ用意されたアンコール”は存在しますが、必ずしもそれを期待しているわけではありません。「演奏が終わればそれで完了」というスタンスのアーティストも多く、アンコールがないことが珍しいとされることはほとんどないのです。
対して日本では、アンコールがなかっただけで「手抜きだ」「冷たい」などと否定的に受け取られることもあります。これは、アンコールが“サービス”として定着してしまっている文化的背景によるものです。この違いを知ると、アンコールの有無に対する考え方が世界ではいかに多様であるかがわかります。
海外と日本のバンド演出の違い
ライブ演出のスタイルは、国によって大きく異なります。特に日本と海外のバンドを比較すると、その違いは演出面だけでなく、ライブの“締め方”にも表れます。
日本のバンドは、ファンとの一体感や交流を重視する傾向が強く、MCやアンコールを通じて感謝の気持ちを伝えることが重要視されています。そのため、アンコールが演出の一部として、あらかじめセトリに組み込まれていることも少なくありません。
一方、海外のバンドは「ライブは音楽で語るもの」という姿勢が強く、余計な演出ややり取りをあえて排除することもあります。特にヨーロッパやアメリカでは、アンコールを行うかどうかはその場の空気で決まり、予定調和を避けるスタイルが一般的です。
このように、バンドの演出にも文化的背景が影響しており、「アンコールがあることが正しい」とは一概には言えないのです。それぞれの国のスタイルを理解することで、より深くライブを楽しむことができるようになるでしょう。
クラシックコンサートでは当たり前のこと
クラシック音楽の世界では、「アンコールがない」という状況は決して珍しくありません。むしろ、演目が終わったら静かに幕を下ろすのがごく一般的な流れです。
クラシックでは、演奏そのものが“完全な作品”として提示されるため、観客はその終わりをもって満足する文化が根付いています。アンコールがあるとしても、それは特に反響が大きかった場合に限られ、当然視されるものではありません。
このようなスタイルは、音楽に対する「礼儀」や「敬意」の表れとも言えるでしょう。観客は静かに耳を傾け、拍手やスタンディングオベーションによって感動を伝える。それが自然なコミュニケーション手段となっているのです。
ポップスやロックの世界でも、こうした“クラシック的な終わり方”を取り入れるアーティストが増えてきており、「アンコールをしない」という選択が、より深い余韻を残す方法として再評価されています。
日本独特の「当たり前」を再考する
「コンサートにはアンコールがあるのが普通」というのが、コンサートにおける日本独特の常識です。これは果たして、本当に“当たり前”と言えるのでしょうか。
日本では、ファンとの絆を深める手段としてアンコールが活用されてきました。その流れの中で、アンコールは「しなければいけないもの」になり、いつしか本来の意味を失いつつあります。
しかし、近年は観客側の価値観も変化し、「演出としてアンコールがないのもアリだ」と受け入れる声が増えています。アーティストが自分の表現を最後まで貫くために、あえてアンコールを行わないという選択も、尊重されるべきという考え方が広がってきたのです。
“日本的な当たり前”を見直すことで、音楽の楽しみ方にさらなる自由が生まれるかもしれません。アンコールの有無にとらわれず、その場で生まれる感動や空気を大切にする…。そんな新しいコンサート文化が今、少しずつ根付き始めています。
なぜ変化が求められるのか？その文化的背景
コンサートにおける「アンコールはあって当然」という価値観が見直されつつある背景には、社会や文化の変化が深く関係しています。これまで当たり前とされてきたルールが、本当に必要なのかを再評価する時代に突入しているのです。
まず大きな要因として、観客の多様化が挙げられます。以前は熱狂的なファンが中心だったライブシーンも、現在では年齢や価値観が異なる人々が一緒にライブを楽しむようになりました。その中で、「アンコールは盛り上がるから必須」という一辺倒なスタイルに違和感を持つ人も増えています。
また、アーティスト側の働き方改革や自己表現の自由も見逃せません。過密スケジュールの中で質の高いパフォーマンスを求められる現代の音楽業界では、1本1本のステージに対する負担が非常に大きくなっています。そのうえで「アンコールも当然」というプレッシャーは、創作や表現の自由を阻害する要因となることがあります。
そして、コロナ禍をきっかけに“ライブの形式そのもの”を見直す動きが一気に進みました。感染対策による時間制限や声出し禁止などの影響で、演出の在り方や公演時間の捉え方も変わり、従来のアンコール文化が再定義されつつあります。
これらの変化はすべて、「観客もアーティストも、もっと自由にライブを楽しもう」という新しい文化の萌芽と言えるでしょう。アンコールの有無にこだわるのではなく、ライブそのものの本質を大切にする姿勢が、これからの時代にはより求められていくはずです。
コンサートでアンコールなしが当たり前に？～まとめ
今回は、なぜコンサートでアンコールなしが当たり前になりつつあるのか、日本と海外との違いや、クラシックコンサートとの比較なども交えて、その理由を深掘りしてきました。
この記事のポイントをまとめます。
- コンサートで「アンコールなし」が増えている背景には、アーティストの演出意図がある
- セットリストに最初からアンコールを含めた構成が増えている
- アンコールを省くことで本編の余韻を大切にするライブ演出が増えている
- 日本ではアンコールが“当たり前”という文化が長く根付いていた
- 海外ではアンコールは必ずしも行われるものではなく、1回のみが主流
- アーティストの体力的・精神的な負担軽減のため、アンコール省略が増加
- 「何回も呼ぶ」日本独特のアンコール文化に疑問の声も
- クラシック音楽の世界ではアンコールがないのがごく一般的
- アンコールの有無はアーティストの表現の一部ととらえる流れがある
- 観客側にも、アンコールがない公演をポジティブに受け止める意識が求められている
アンコールがないコンサートが増えているのは、決して手抜きではなく、むしろライブを一つの“作品”として届けたいというアーティストの意志の表れです。
日本と海外での文化的な違い、クラシックとポップスの演出の差を知ることで、より深くライブの背景を理解することができるでしょう。これからの時代は、アンコールの有無にとらわれず、その瞬間のパフォーマンスを純粋に楽しむことが、新しいコンサートの楽しみ方になるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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